横山大観展(新国立美術館)〜いかに描かず、いかに描くか(1) 

rosa412008-03-03


 そう言われても、引き返すわけにはいかない。
 先週、岐阜出張の帰りに、品川駅で新幹線を降りて原宿で下車。地下のコインロッカーに荷物をあずけて、乃木坂の新国立美術館へ。平日だからと甘く見てたら、チケットを買うと「30分待ち」といわれた。一瞬迷ったが、わざわざロッカーに預けた荷物のことを考えて、行列にならんだ。これほど大々的な大観展は最後かもしれないから。

 
 結論から言うと、観てよかった。
 常に今を、現時点をかなぐり捨てて、新たな次元へ向かう。その獰猛な大観の軌跡に”満腹”になった。いや満腹にさせられた。

 たとえば、「朦朧体」とよばれる、中国の水墨画をよりメリハリを利かせ、もっと高貴な質感を漂わせた作品の後に、黄色でベタ塗りの作品を制作している。あれっと思って目を近づけると、ベタ塗りされた下地が濡れて所々で縮み、独特な質感をかもしだしている。あるいは米国帰りの1900年初頭、森山大道のボケ写真みたいな、輪郭のぼやけた海辺の景観を描いていて面白い。


 そんな画風の捨てっぷりがかっこいい。しかも、この人は水墨画も水彩画も、まるで遜色ないほど絢爛(けんらん)としている。(今月3日で展覧会は終了)