大島弓子『グーグーだって猫である』(第1巻 角川文庫)〜隙間たっぷりの生老病死


 穏やかな昼下がり。レースのカーテンが、いくらかの日差しと風をはらんでしずかに揺れる。この本には、そんな余白がふんだんにある。読みながらどんどん力がぬけていく。


 ひさびさに大島さんの漫画を読んで、サバと大島さんの日々を淡々とつづった過去の作品を思い出した。だが、そのサバがすでに天寿をまっとうしたこと。それに大島さんがガン手術を受けられたことを知る。新たな子猫グーグーと、傷を負った捨て猫ビーとの日常がつづられている。


 ひとり懐かしがりつつページをめくりながら、大島さんが、なぜこのエッセイ漫画の形態に移っていかれたのかに、アホなぼくはようやく気づいた。


 作者の眼は、猫を通して、作者自身や世の中を観ている。そして時に笑い、励まされ、あるいは寂しくなったり、苛立ったりする。なにより、この隙間たっぷりのストーリーは生老病死がきちんと織り込まれつつ、さらさらと進んでいく。



グーグーだって猫である1 (角川文庫 お 25-1)

グーグーだって猫である1 (角川文庫 お 25-1)