シンプルの強度(1)〜アルベール・ラモリス『赤い風船/白い馬』


 「北京五輪」企画の原稿が全部終わったので、気分転換に外出。まず、シネスイッチ銀座で、アルベール・ラモリス『赤い風船/白い馬』の2作品を立ち見鑑賞。映画の日だったせい。仏のオルセー美術館が開館20周年記念事業として立ち上げた第一回目の監督に、台湾のホウ・シャオシェンを指名。彼が選んだのが、この『赤い風船』へのオマージュ作品『レッド・バルーン』。しかも、主演がジュリエット・ビノッシュ。


『赤い風船』自体、1956年カンヌ映画祭などで数々の映画賞を受賞したものの、権利関係問題で海外公開が現在まで遅れたとされる幻の作品。あのホウ監督がオマージュを捧げる作品だからと、観に行ってきた。『赤い風船』の方が好きだな。


 風船ひとつあれば、映画はできる。さしてセリフもないこの作品を観れば、それがよくわかる。まっ、ずるいといえばずるい。ただし、どんな分野であれ、クリエイティブを志す人間には絶好のお手本。
 赤い風船をめぐる、少年のワクワク感や、大人の苛立ち。他の少年たちの悪戯心や争い。さまざまな人間模様がつづられる。赤い風船をめぐる寓話。ただし、ラストは、オジサンにはちょっとメルヘン過ぎる。もう少し苦味を効かせてほしかった。