YUKI『ファイブスター』〜生と死を見すえてこそポップソング


 白はそれだけでも、もちろん白。だけど、その隣に黒があることによって、白としてさらに輝く。まるで同じことが、生と死についても言える。 

哀しくって 泣いてばっかりいたから 芽が溶けて無くなった
秋になり また 冬になり ひとつ年をとった
遠くまで 逃げているつもりでも 終わらない 君のストーリー

にやにや 笑っている ふがいないや。いや。
すがりながら 追いかけてみても あしげにされても
空いた穴を 埋めよう ちがいないや。いや。

かさねあう もたれあう すててしまうんだ もうすぐ
消えてしまう 愛しい人も 優しい日々よ もうすぐ


「ふがいないや」より抜粋


 この歌詞が加速するビートの中で歌い上げられる。
独りで生まれ独りで死んでいくしかない人間の、濃縮果汁100%のような歌。さらには『ふがいないや』という澄み切った諦観で、それを抱きすくめる天才を見よ。


 空いた穴を埋まらないと知りつつ、埋めようとする。
それが人の営為なら、それはたしかにふがいないや。その犬死にの檻(おり)から、どんなお金持ちも、あるいは貧乏人も逃れられない。だとすれば、YUKIのようにポップソングにして抱きすくめるしかない。


Single Collection”five-star”

Single Collection”five-star”