神田山陽プレ独演会(東中野・ポレポレ坐)

 仕事がひと段落したので(年内のではなく直近の)、冷たい雨の中、前から一度生で聴いてみたかった、講談師・神田山陽さんのプレ独演会へ。こういうのにプラッと出かけられるのも、東京暮らしの利点。しかも30人強ほどの出前ライブ風だった。
 普段着の山陽さんが立ちっ放しで話すというのも、プレ独演会ならでは。おまけに、途中の5分休憩時にも、山陽さん本人は演台に残り、お客さんが休憩をとりに出ていく。ちょっとアベコベな感じだった(^^;)。


 山陽さんは今月24日の新宿紀伊国屋ホールでの独演会を控えていて、そのウォーミングアップも兼ねてか(?)、企画されたのが今日と明日の舞台というわけ。だから「プレ独演会」。
 演目間のつなぎに、山陽さんがちらっと語った小学校3年生の淡い初恋が、どう演目に織り交ぜられて、現代風の講談が立ち上がっていくのか。そんな舞台裏も垣間見られて面白かった。


 虚構に血を通わせる際、演者自身のかつて言い出せなかった胸の内や、踏み出せなかった一歩を素材に、鍛錬された想像力を加えて一気にふくらませる、か。


 一方、気がつけば日々の生活の多くは、バーチャルな情報ばかりで包囲されてしまっている。戸外に自室空間を持ち出すように、耳にイヤホン、片手に携帯、もしくはDSという回遊型「引きこもり族」が闊歩する。そうやって遮断しないと、街と人ごみに力負けてしまうからだろう。
 また、そんな世の中だからこそ、落語や講談といったその場で味わう語りの芸は今後、ブームにはならなくても、一定の需要を喚起しつづけるにちがいない。山陽さんの噺に耳をすましながら、そう確信する。