アトリエシエスタ作「ノエルの朝」〜縮こまる世の中にこそ午睡(シエスタ)


 先日、シエスタとひさしぶりに電話で話したとき、新作ビデオ「ノエルの朝」のことを知った。あかねちゃんが作ったキャラクターを、ちょっとずつ動かしながら動画に撮りためて、4分を超えるビデオをつくったという。わずか4分強の作品で、そのコマ数が1000コマ。
「もう全身、筋肉痛で大変でしたよぉ」
 そうこぼす潤くんの口ぶりが、言葉とは裏腹に嬉しそうなのが可笑(おか)しい。


空手バカ一代
 受話器の向こう側の、潤くんの表情を思い浮かべながら、昔読んでいた連載漫画のタイトルがうかんだ。
 ある種類の人たちから見れば、世界規模の不況がやってきているのに、そんな一銭にもならない「YouTube」映像にバッカみたい、というだけの話かもしれない。
 しかし、「同じアホなら、踊らにゃ損々」とばかりに、筋肉痛も顧みず、エネルギーをふりしぼって何かに情熱を注げる人はそう多くない。ましてや、それを注ぎ続けられる人はもっと少ない。


「今回の作品をつくることで、結局、私たちの活動はどこをどう切り取っても、金太郎飴みたいに同じなんだって確認できた気がします」
 あかねちゃんの、そんな言葉が印象に残る。作品にすることで、それが鏡のように映し出してくれるものがある。創り手だけが持てる、合わせ鏡のようなもの。


 ガキの頃はよくわからなかった「空手バカ一代」の輝きは、その一途な「おバカさ」ぶりにこそある。
 従来のシエスタの楽曲に、見る者をホッとさせるキャラクターが加わり、その世界観はよりグラマラスに、そしてゆったりとたゆたいながら、穏やかな饒舌さで成熟へ向かっている。