セバスチャン・サルガド写真展『アフリカ』

rosa412009-12-16

 

 まんじりともせずその一枚と向き合いながら、思い返されたことがある。
 今回の展示における子供たちの作品群だ。本物の銃を携えるぼやけた少年兵を背景に、木製のオモチャ銃を所在なげに持つ5歳前後の子どもの老人のような眼差し。どうやってそこに潜りこんだのか、反政府軍集会のステージで、軍靴の下の隙間から目だけをギョロつかせる子どもたち。笑うでも泣くでもなく、カメラを見つめる子どもの凍りついたような表情。


 それらも、戦争被害の告発と見る人もいるだろう。
 でも長く向き合ってみると、そういうレッテル貼りからはみ出さずにはいられないエネルギーをぼくは感じる。理屈もへったくれもない、生きていくことの露な現実と向き合うサルガドの眼は、侮蔑からも同情からも遠く、まるで生きた魚をわしづかみにしている骨太な手のようだ。


 それはサルガドの『人間の大地 労働』という写真集を知っていることも大きい。鉱山などでのおびただしい労働者を俯瞰しながら、寄りと引きの視点から、その苛酷さとともに荘厳さをもつかまえてしまう、元経済学者である写真家の力量を知っているせいだ。

 
 生きてあるものへの共感と、生きていくことへの敬意。
 サルガドの写真がどんな悲惨な現実を切り取ってなお、どこか美しいのは、そんな撮る側の姿勢によっている。