『おとうと』(2)〜厄介さと寂しさの挟間


 死に際の鶴瓶(弟)に吉永小百合(姉)が添い寝する場面がある。
鶴瓶が姉に再婚しなかった理由をしつこくたずねる。俺がいろいろと問題を起こしてきたせいか、と。吉永がそれをきっぱりと否定すると、彼はぽつんとこうつぶやく。


「なんや、姉ちゃんも寂しかったんや」


 家族のもつ厄介さと、ひとりひとりがかかえる寂しさ。それが絆(きずな)の正体で、その狭間を右往左往しながら、人はときおり宛てのない情愛をふくらませるしかない。それは山田監督が「寅さんシリーズ」から延々と描きつづけてきたテーマでもある。
 

 「白血病かガン」と「純愛」のセットメニューで、客に「泣けました」と連呼させるションベン臭い錬金術にはない、山田映画がもつ大人のリアリズム。おおいなるマンネリズムの強みだろう。誰もが自分の家族のことを考えれば、程度の差こそあれ、厄介でないはずはないのだから 
 唯一、冒頭の場面で添い寝する姉弟の絆を、赤いリボンで表現するあざとさは余計だ