倉俣史朗とエットレ・ソットサス展(21_21デザインサイト)


 ルポ物は今売れないんですよ。もっと実用書風にしては、どうですか――書籍企画をもって営業していると、こう言われることが多い。だから、「倉俣史郎とエットレ・ソットサス」展の入口で、つぎのような倉俣さんの言葉に出くわしたときは、グッときた。

機能を実用性から切り離し、デザインにおける美と実用性の真の一体性を理解させることです。デザインにおいて、根源的な美が機能を超えていかなければならないと。


 永田町で打ち合わせを終えた帰り、あんまりいいお天気だったのと、倉俣史郎さんの作品を一度生で観てみたかったから、六本木まで足を伸ばした自分の頭をナデナデしたくなった。


 たとえば、割れたガラスの破片を敷き詰めたガラス製テーブルや、細い特殊なスチールを細かく編みこんで強度を高めた三角錐型の椅子。それらはテーブルに求められる「機能」や、椅子に求められる「機能」とは、一見違う方向から素材や形状が選ばれている。


 それらを「ポストモダン」と乱暴にひと括りにしては見誤る。むしろ、上質なユーモアをたずさえた美意識で、それぞれの「機能」が巧みに包みこまれていると見るべきだ。
 だから実用書と聞いて腐る必要は何もない。
 実用書という「機能」を、自分なりのデザインで切り裂いたり、包みこんだりしてあげればいい。