重森三玲「北斗七星の庭」展(ワタリウム美術館)

「伝統は学び尽くした後で、きれいに捨てなければいけない」
「間違っているとは、ひとつの常識の中での話であって、その常識の外では間違っていないかもしれない」
「技巧を学んだ末に、無技巧で表現しなくてはいけない」


 全国各地の三玲の庭のスライドを観ながら、心に引っかかった彼のアフォアリズムのいくつかを書きつけてみる。正確さには欠けるが、おおまかにはこんなニュアンスだったと思う。


 「北斗七星の庭」展でのオープニングトークでのこと。作庭の途中で、現場に訪れる人たちには、誰彼となく自らお茶を入れてふるまうほどのお茶好きだったという。その和服にオールバックめいた髪型は、どこか小林秀雄をほうふつとさせる。


 京都・東福寺の方丈庭園の「小市松の庭」と「北斗七星の庭」のミニチュアが実際に展示されているところに、ワタリウムの心意気を感じる。1枚のチケットで何回でも入館できるのもうれしい。ひと月に3,4回は出かけて、三玲の庭とボーッと、ぼんやりと向き合いたい。


 まだ三玲の庭を観たことがない人には、東福寺のさまざまな旋律が聞こえてきそうな四面の方丈庭園や、78歳で挑んだ松尾大社のパンクロックみたいな盤座(いわくら)の庭を、スライドを通してでも一度体感してもらいたい。スチャラカも何度も通ううちに、ひとつでも新たな発見ができれば、うれしい。