敬意を表したくなる麺〜芝蘭神楽坂店のサンラーメン

 キムチのおいしい韓国料理店と同様に、ザーサイのおいしい四川料理店にハズレはない。芝蘭神楽坂店のザーサイは、塩漬け加減が絶妙で、なおかつ濃くがあり、今まで食べてきた中で一番気に入っている。天気がよかった昨日、夫婦でそこにランチに出かけた。
 最初は、担々麺好きな奥さんのために出かけたのだが、いつの間にか、ぼくはここのサンラーメン(酸辣麺)の虜(とりこ)になっている。ちなみに、多くの女性客は汁あり、汁なしもふくめて担々麺をこの店では注文しているのだが。
 

 透明感と気品のある辣油色のスープ、その中央に少し顔をのぞかせる麺と青梗菜(ちんげんさい)の緑のコントラストが、まるで一幅の絵画みたいだ。まずスープを口にふくむと、上品な黒酢と辣油、そして挽肉の濃くとのバランスがクセになる。麺もそのスープをしっかりと沁み渡らせていて、二度おいしい。しばらくすると、額や鼻の頭から汗が噴き出してくる。


 だが、それだけでは満腹には程遠い。この日も、まず蒸し鶏とネギのワサビソースがけ定食を注文。これは四川料理よだれ鶏の和風版らしく、みじん切りにした白ネギとワサビソースがとても上品な味だった。
 大食いの私が芝蘭を気に入っているのは、ランチ時の定食は、ごはんがおひつにたんまり入って出て来る点。それに先のザーサイ、杏仁豆腐やフルーツがお代わり自由なのもうれしい。


 定食をそそくさと片付け、サンラーメンを注文し、残りのスープをご飯にかけてじっくりと味わい尽くせば、自然と顔がほころぶ満腹感につつまれる。額や鼻の汗を拭きつつ、ラーメン鉢のスープを残さずにいただくのは、この一品への自分なりのささやかな敬意の表し方。料理を出す側もきれいに食べてもらえれば嬉しいはずで、けっして食べ物に卑しいわけではありません。