24時間豚丼が食べられる便利さ

rosa412004-03-29

トリビアの泉」だったら、ぼくは「8ヘェー」ぐらい押してしまいそうだ。それほど意外だった。先のBSE問題で一躍有名になった肉骨粉の話だ。食肉部分を取り除いた後の骨や内臓などの畜産廃棄物から作られる。
日経ビジネス」3月29日号で、ウイルス学者の山内一也・東京大学名誉教授は、肉骨粉の歴史は第二次世界大戦後からと、意外と浅いことを指摘している。
 戦後、使い道がなくなった畜産廃棄物からとれる油の有効活用先として、アメリカ政府が家畜飼料への転用を奨励したんだって。その畜産廃棄物から出る油が家畜の濃厚飼料として、膨大なミルクを効率的に出させるために優れている性質が報告されたからだ。
 で、戦中はその油が何に使われていたかというと、爆薬の原料となるニトログリセリンなんだな、これが。「えっ、マジ!?」って感じでしょう。「8ヘェー」レベルでしょう? 畜産廃棄物の油から、戦中は効率的に人が殺せるニトログリセリン、戦後は効率的に牛のミルクが搾乳できる飼料としての肉骨粉。全然違う分野だけど、結果から見ると、どちらも人間の生活を極度におびやかしているという点では似ている。実に因果な油だ。もちろん、油に責任はないんだけど。しかも戦前は、その油からロウソクなどが作られていたという。そう、とても牧歌的に利用されていた時代もあったんだ。
 冒頭の記事でも、BSEも鶏インフルエンザもふくめて、家畜感染症は食物生産にまで過度に経済効率をもとめる「文明病」と山内さんは語っている。
 それなのに、だ。山内氏の取材を終えて、同誌編集長は最後の<傍白>で「折りしも、スローフードブームです。安心・安全こそが消費者の心をつかむキーワードだと改めて感じました」なんて、供給サイドに問題への対応を丸投げしてお茶をにごしている。
 これはズルイ。生産者と消費者の両方に責任があるという立場に立たないと、この手の問題は抜本的な解決には永久にたどりつけない。それって自分は夜更かしして膨大な電気を使いながら(ぼくも夜更かし型ですが・・・)、その一方で、原発反対って電力会社だけを悪者視しているのと同じだもん。
 牛丼が消えるという騒動の中でも、そういう視点からの報道は少なく、ぼくが見た限りだと、東京新聞が「牛丼が24時間食べられることって本当に必要なのか?」と社説に書いていただけだった。
 肉をたくさん食べたり、電気を大量に使ったりする人たちがいるから、それらをたくさん、効率良く生産するために、肉骨粉原発が生み出されている。でも、それってどうよ?という視点だ。
 今回大幅減収となった吉野家には悪いんだけど、「吉野家豚丼が24時間食べられる便利さって本当に必要なの?」って地点から、作る側も食べる側も一緒に考えないといけない時期だとぼくも思う。もちろん、コンビや漫画喫茶だって同じ。
 そんなこといったら、せっかく良くなりはじめた景気が悪くなるという意見もあるだろうけど、そういうことで支えられている景気や世の中ってどうなの?という意見もあるだろう。
 去年の秋頃から、柄にもなく、環境ビジネスで活躍している人たちにお会いして話をうかがう仕事をしていて、まさに”門前の小僧、経を読む”レベルなんだけど、遅まきながら、そんなことを考える機会が増えている。