サリー・ワイルを偲ぶ晩餐会(横浜ニューグランドホテル)〜77年ぶりに再現されたフレンチ・シェフのメニュー

rosa412005-09-05

 先輩の神山典士さんが、講談社から『初代料理長サリー・ワイル』を今月出版された。サリーワイルとは、日本に本格フレンチを伝えたといわれるスイス人シェフだ。昭和2(1927)年、関東大震災からの復興のシンボルとして建設された横浜ニューグランドホテル。そこの初代料理長として招聘されたのが、すでに故人であるワイル氏だった。神山さんが二度のスイス取材までされた労作だ。ご興味がおありの方は、ぜひ、ご購読ください。ぼくもこれから読みます。
 ワイル氏は最新の厨房設備と調理技術を駆使して、20年間、同ホテルで働いた。同ホテルで、あるいはヨーロッパに帰国後、彼を慕って多くの渡仏した若き日本人料理人たちの面倒をみたといわれる。
 神山さんの著書出版にあわせて、今回は昭和3年にワイルが作ったメニューを多少現代風にアレンジした晩餐会が、同じ横浜ニューグランドホテルで催された。パークハイアット東京、あるいは東京や京都ホテルオークラの総料理長、日仏料理協会会長、服部幸應服部栄養専門学校校長など、豪華なメンバー150人が顔をそろえた。先日他界された帝国ホテル顧問の村上信夫さんも出席予定だったという。
 ぼくもうちの奥さんの少し遅めの誕生日祝いをかねて、同ホテル宿泊とセットで出かけてきた。写真は、晩餐会会場となった同ホテル本館ボールルームでのもの。
 当日のフレンチは、オードブル(魚と肉のテリーヌに、酢漬け野菜など)、コンソメ・アンバサドゥール(スープ)、舌ヒラメのポンパドール(ほぐしたカニ肉をまぜてフライにしたもの)、若鶏のロースト ベリゴール風(鶏肉にフォアグラを入れて焼いてあった)、レタスのニース風サラダ、バニラアイスクリームの抹茶ソースがけ、プティフール(小さなお菓子)・コーヒーと、いたってオーソドックスなものだった。
 しかし77年前のメニューとなると、想像力がいたく刺激される。当時レタスはかなりの貴重品だったらしく、昨夜も、小さなレタスがわずか2きれに、輪切りのオリーブをのせた実にストイックなニース風サラダ。しかし、レタスに濃厚な味があって、シンプルなだけに唸らされた。個人的に、こういう余分なものを極力排除した料理に心動かされるタイプではあるんだけど。
 あと、印象的だったのは若鶏のロースト。フォアグラが入れてある若鶏と、うずらの肉が一片ずつローストされて出てきた。これは現代風アレンジなのかどうか、わからないが、その組み合わせが新鮮だった。
 で翌6日は、中華街で神山さんらを、ぼくが「清風楼」にお連れして、焼き飯、焼きソバ、シュウマイの三点セットを軸に、腹いっぱいいただいた。当分、中華はいいわっていうぐらい。やっぱり庶民体質のぼくには、ばくばく食べられるB級グルメがお似合いなようです。神山さん、ご馳走様でした。

初代総料理長サリー・ワイル

初代総料理長サリー・ワイル