木村充揮の『君といつまでも』

rosa412010-04-23


「ふたりを ゆ うやみが つつむ こ の まどべに」
 言葉を切る。といっても、ただブツ切りにするのではない。
 言葉と言葉の挟間には、ある余韻がただよい、たしかに連なっている。それは「溜(た)め」とか、「間合い」ともよばれるものだろう。文章でいえば、月並みだが「雰囲気のある行間」。


 元憂歌団の木村さんが歌う『君といつまでも』を、TBS『僕らの音楽』でひさしぶりに聴いて、グッときた。浪速が誇るブルースシンガー。あの有名な語り部分はシャイな大阪人風に、最後のリフレインの歌詞「変わらない いつまでも」は、「変わらない いつ マミムメモ」と茶化して結んだ。ああ、木村やなぁ〜とニンマリしてしまう。


 似たようなものを、フラメンコの舞台で観たことを思い出した。
 うちの奥さんが最初に習っていた、フラメンコ教室を主宰する先生の踊りだ。一般的なフラメンコを縮小したかのように、手足を極力動かさず、その代わりに肩や肘、手首をたくみにあやつりながら、それはやはり奥行と余韻のあるフラメンコとしか言えないものだった。
 

 一般的なフラメンコが散文だとすれば、まるで凝縮された詩か俳句。その表面的な体裁だけを真似しても、けっしてそんなカッコよくならないことは、素人目にも明らかだった。
 いずれも本質だけを残し、あらゆるぜい肉をそぎ落とした末の表現。寸断、あるいは省略こそが、より濃密な空間を創りだしていた。

(上記のとは少々違いますが、Youtube動画でもお楽しみください)