2013-01-01から1年間の記事一覧
夕方、新大阪について淀屋橋のホテルにチェックイン。翌日からの取材行程を書き出し終えてから、数日前に買ったばかりのシューズで走り初めに出るが、ちょっと早すぎた。6時過ぎに御堂筋に出ると、退勤ラッシュの流れに巻き込まれてしまう。モノクロームの…
眼下の3点をほどよい等間隔で視野に入れ、まず中腰にかまえる。老人のアゴ髭のような根っこをひょろひょろと伸ばす3本の苗を、左手の束からつまみ上げ、田んぼのトロトロ層にすっと刺す。つづいてテンポよく、すっ、すっと残る2点にも横並びに刺す。 貝割…
白いあご髭、白と灰色まじりの頬髯をたくわえた男が、ぼくを見ている。タテ幅150センチ近くの画面いっぱいに彼の顔が大写しされていて、画面から約2メートルの間隔でむき合うと、身長180センチのぼくの目と、彼のつぶらな瞳がちょうど同じ高さになる…
先日、夫婦でランチを食べに赤坂に出かけ、そこからラフォルジュネ見物に東京駅前に向かった。案の定、丸の内口周辺は、地方から遊びにきた人たちでごった返していた。そもそも、代々木公園で行われていた南米フェスタに出かけるつもりでいたが、当日気が変…
ひさしぶりに「ファイト!」を聴いていたら、ふいに刺さった。 彼女の歌い上げ方のせいだ。最初の「ファイト!戦う君の歌を、戦わないやつらが笑うだろう」は、まるで小学生みたいな歌い方で入る。それが歌いすすむにつれて、少しずつ強く、激したものへと変…
下北沢駅南口から出て、開始時間の近くに書店にたどり着くと、すぐ後にピーター・バラカンさんも会場入りされた。まじかで見ると胸板がとても薄くて華奢な人。会場は50人超が詰めかけていた。男性が8割で年齢層は高め。 音楽評論家の湯浅学さんとの対談は、…
「劣等感と崇拝がそうであるように、優越感と軽蔑も愛の重要な隠し味なのだ」 この本の前に読んだ本の一節。そして上記の『らも』は、まさにその一文をリエゾンするかのような夫婦の軌跡が綴られていた。まるでシンクロニシティのような流れに気味が悪くなる…
落語と精神分析って? そう思う人たちは、たとえば「粗忽(そこつ)長屋」をテーマとした章で、こんな文章に向き合うとき、たとえば心臓の裏側らへんに、なんとも嫌な汗をかくはずだ。粗忽とは、おっちょこちょいのこと。 粗忽な人を見るときのひとびとの視…
高坂勝さんが共同代表の一人として関わる、緑の党の参議院選の立候補者発表に出かけてきた。 歌の合唱から始まり、候補者紹介やクイズ、安倍首相の仮面をつけた「ダースアベイダー」を交えた政策論争めいたものあり、明るくてなごやかなイベントだった。選挙…
ふと目に留まる、気になって手に取る、読み始めると一気に引き込まれてしまうその瞬間にこそ、本読みのたまらない歓びがある。在米中国人小説家、イー・ユンリー以来のそんな一冊。少し長いが、同書の「立川談志という水仙」の一節を引用する。 『高座に上が…
当事者でないと見えないものがたくさんある。そして当事者ではないから、無意識に、他人を傷つけてしまうこともある。 2000年に起きた世田谷一家殺人事件。二世帯住居で、妹一家を唐突に奪い取られた著者が、失望や自責の念、周囲の偏見などから生きる意…
雨の中、蔦屋書店代官山店にたどり着き、控え室に指定されていた2階ラウンジに入ると、深緑色の革張りソファが並ぶラグジュアリーさにちょっと緊張した。だって、イベントタイトルが「脱経済成長」ですからね。雑誌「太陽」や「VOUGE」、「暮らしの手帖」な…
きょうみたいにきっぱりとした冬の青空をながめながら、グレン・グールドの演奏でブラームスの「インテルメッツオ」をきく。しばらくすると息がふかくなり、肩の力もぬけてくる。弥勒菩薩のアルカイックスマイルのような旋律は、胸の奥をとてもしんとさせて…
本日のWEB版「日刊SPA!」で「幸福な縮小(ハッピーシュリンク)のススメ」とのタイトルで、拙著ならびに拙者が紹介されました。 あわせて、3月25日(月)蔦屋書店代官山店での拙著関連トークイベント「脱経済成長の幸せな働き方」のインフォメーションも…
かつては中国、現在ならアメリカという「上位者」に対する、「辺境人」として日本人を位置づけるテーマ設定の下、日本人の歴史的な行動形式や勤勉さ、さらには日本語の在り方にまで及んで、その一環した「辺境人」ぶりにスポットライトを当てている。2009年…
今朝のNHK-FM「快適音楽セレクション」で知った、グレゴリー・ポーター。「ビー・グッド」な三連休のイントロダクションにおすすめです。
いのちが喜んでいるなぁ、出し抜けにそんな思いが身体のどこからか湧きあがってきた。どくんどくんと音を立てる心臓を、両手の平で鷲づかみにしている感じ。きっぱりと晴れ上がった空、少し熱いぐらいの日差しと、それをまばゆく乱反射させる荒川の川面を横…
友人から真砂秀朗さんの『畦道じかん』(テン・ブックス)という本をいただいた。アーティスト兼ミュージシャンで、なおかつ冬期湛水不耕起田んぼでの、お米作りを十数年つづけている方。畦道(あぜみち)という視点から自然と人の、経済といのちの関係を詩…
ひたすら空回りする自分を眺めるのもまんざら悪くない。基本、M体質だから。昨年末、紀伊国屋書店でやらせていただいたトークイベントの模様が、紀伊国屋書店新宿南店のwebにアップされました。 電気も水道もないタイでの生活から帰国したてで「前向きなバッ…
「お客さん、すみません」 そう呼び止められた。場所は近所の公立中学校の温水プール、ちょうど18時半すぎ頃でプールサイドに入場した直後だった。何事かと振り返ると、学生アルバイト風の監視員の男性はこう続けた、あのぉ〜、背中のサロンパスは取っていた…
不協和音が断続的に流れるスピーカーの真下で4、5歳の女の子は両手をひろげてくるくると回り始め、ベビーカーに乗っていた3、4歳の女の子は、その展示室に入って来るととっさに両耳を押さえて顔をゆがめた。あっ、とぼくは心の中でそう声を上げていた。…