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高坂勝著『減速して生きる―ダウンシフターズ』(幻冬舎)

「減速すれば、景色が鮮明に見える。発見もある」 作家・村上龍の推薦文が腰巻におどっている。 過剰消費の最前線でもある大手百貨店を辞めた後、一転して車で移動するキャンプ生活をはじめる。今から10年前の当時、彼はふたつの不安をかかえていた。 サラ…

篠宮龍三著「ブルーゾーン」(牧野出版)

ブルー・ゾーン作者: 篠宮龍三出版社/メーカー: 牧野出版発売日: 2010/08/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 20回この商品を含むブログ (4件) を見る 以前、テレビで彼のドキュメンタリーを観ていて惹かれた。独特の言葉をもっている人だった。先日も、…

川田修『かばんはハンカチの上に置きなさい』14刷り決定

自分の気持ちや、自分の環境を何かしら変えたいときに、人は本に手を伸ばす。何かを強く求める気持ちがあるからこそ、本のある一節や一文が、その人の心の純粋でナイーブな場所にふれる。 縁もゆかりもない人同士が、本という紙の束を通して何かを共有する。…

松久氏本、藤井さんの「ビジネス選書&サマリー」で紹介

松久信夫さんの著書が、「週末起業フォーラム」代表の藤井孝一の「ビジネス選書&サマリー」で紹介されている。いくつかの本文抜粋の後、選評がある。 「しかし、本書の本当の魅力は、そうした数々の仕事術そのものでは ありません。アイデアが根ざしている…

矢川光則著『海をわたる被爆ピアノ』(講談社)

「あらかわさん、恥ずかしい話ですが、わたしは50歳すぎてからの、この5年間で、すごく成長したと思うとるんですよ」 この言葉にぼくはグッときた。 40代後半の若輩者相手に、恥ずかしい話ですが、という彼の前置きも率直で、カッコよかった。 その矢川…

松久信夫著『出社は月に3日でいい』(東洋経済新報社)

本の「ヘソ」という言葉を時々使う。 その本の核心部分ということ。構成をお手伝いしたぼくにとって、この本の「ヘソ」は第5章、とりわけ最初の「『人間は自分が一番かわいい』がすべての出発点」の項。 喫茶店のカウンターに、松久さんと並んで座ってお話…

佐野洋子『ふつうがえらい』

地下鉄の乗り換える駅の、あるいはぶらりと立ち寄った公園のベンチで、さもなくば自宅ベランダのベンチで、読んでいた本の一節に心をグイッとわしづかみにされることがある。 なにかしらぼんやりと思いながらも言葉にできていなかった考えとか、文字書き商売…

写真資料集『 延辺文化大革命―10年の約束』(韓国・図書出版土香刊行)

戸田郁子さんの、ご主人である柳銀珪(リュ・ウンギュ)さんが、中国の少数民族である朝鮮族から見た「文化革命」というテーマで、貴重な本を出版されました。戸田さんは、韓流ブームの30年近く前に韓国に留学され、自著を出され、最近は出版社を立ち上げ…

赤木明登(あきと)著『美しいこと』(新潮社)

その装丁とタイトルの、一見ミスマッチなたたずまいに、「秘するが花」といわんばかりのセンスがある。まっ、レコードのジャケ写買いみたいなもんですな。ただし、正直に白状しておくと、以前出かけたあるギャラリーで、赤木さんの『美しいもの』を読んでい…

川田修著『かばんはハンカチの上に置きなさい』(ダイヤモンド社)

昨年8月末に出た上記本の10刷り5000部が決まりました。今月上旬に9刷りが決まったばかりでした。もう、5万部目前です。 簡単なようでいてじつは奥行きが深い。ノウハウのようで、じつは人間力。そんな二枚腰の一冊が、こうしてじっくりと読者を増や…

拙著「レンタルお姉さん」がちっちゃく掲載!

し、知りませんでした。編集者のNくんからのメールで教えてもらい、ネット検索したら、1月17日(日)の朝日紙書評面でこんな記事がヒット!日曜の書評欄がどれだけの競争率かということを考えたら、ほんとうにありがたいことです。あらためてお礼申し上げ…

内田百けん・ちくま日本文学(筑摩文庫)

ああ、こういう人生の愛し方があるのか。 中学生の頃、エゴン・シーレの、あのグロテスクな自画像を観てそう思った。自分の醜悪さと徹底して向き合おうとする強固な意志、それは当時、自己反省の目立つ日記ばかりを書いていたぼくには、反省癖を高度な芸術に…

あのベストセラー『考具』の著者、加藤昌治氏のおススメ20冊(青山ブックセンター本店)

たまに遊んでもらっている某代理店の加藤さんが現在、あの青山ブックセンター本店で、「おススメ20冊」フェアを開催中(12月末まで)。このラインナップのバランスが絶妙っす。古典的名著『高校生のための文章読本』(筑摩書房)や、吉野源三郎『君たち…

城山三郎『粗にして野だが卑ではない』(文春文庫)〜粗でも野でもないが卑しい人たちの時代に

もう読み終えるなぁと思いながらページをめくっていたら、ふいにグッときた。 ○死亡通知を出す必要はない ○こちらは死んでしまったのに、第一線で働いている人がやってくる必要はない。気持ちはもう頂いている。 ○物産や国鉄が社葬にしようと言って来るかも…

増田美智子著『福田君を殺して何になる』(2)(インシデンツ刊)

より多くのエネルギーを投入するほど、その是非にかかわらず得るものは多い。書き手の一人として、この本を読んで改めて学ばせてもらったことのひとつ。 この著者の取材対象への執拗さは、福田君への面会だけでなく、主にその父親や彼の弁護士、福田君の元獄…

増田美智子著『福田君を殺して何になる―光市母子殺害事件の陥穽』(1)(インシデンツ刊)

ぼくの仕事場には新聞記事が何枚か貼られている。 ちょうどぼくの目の前にあるのは東京新聞11月7日(土)付け29面、秋葉原無差別殺傷事件の犯人が、被害者家族に送った手紙の全文がのった記事。それを読むと、あの犯行直前まで犯人がネットに投稿してい…

❤拙著『レンタルお姉さん』再刊❤

今朝、できたばかりの文庫本がとどいた。単行本とはガラッと違う、クールな装丁。黒と金地の腰巻が装丁全体をキリッと引きしめていて、なおかつタイトルの赤字とのコントラストもきれい。左隅のアウトロー文庫のロゴとの色合いのコラボも、きめ細かい。 ドラ…

川田修著『かばんはハンカチの上に置きなさい』(ダイヤモンド社)

20日付け東京新聞2面に、右の広告が掲載されました。パチパチパチ!日経などではすでに掲載されたようです。無事、7刷りも決まりました。 「単なるトップセールスではなく、人として誇れる自分になれるように生きていきたいと思います。その事に気づかせ…

金子光晴『異端 金子光晴エッセイコレクション』ちくま文庫

本との縁(えにし)は恋愛のようだ。 少し前から内田百輭が気になっていた。あの飄々とした文体が、だ。東京駅周辺で打ち合わせがあり、その後、丸の内側のオアゾに立ち寄った。ちくま文庫の内田百輭をどれか買うつもりだった。 パラパラとめくると、いずれ…

川田修『かばんはハンカチ』(ダイヤモンド社)

人生ぃ、苦ありゃ〜 楽もあるさぁ〜♪ 外資系生保セールス、川田さんの本が好調です。八重洲ブックセンター週間ランキング(ビジネス部門)2位、ダイヤモンド社週間ランキング2位。全国でも順調に売れているようです。 誰にでも、すぐ真似できるノウハウ、…

阿奈井文彦『サランへ 夏の光よ』(文藝春秋刊)

おおっ、とうとう、おれも幻影を見るようになったかと思ったよ。 4人部屋病室の、入口に近い右側ベッドであぐらをかいて座り、黙々と新聞を読まれていた阿奈井さんが、少し上目づかいでそういわれた。低音がよく響く、聞きなれた柔らかな声と、どこか自虐的…

三木成夫著『海・呼吸・古代形象』(うぶすな書院)

前回の鯵の頭につづいて蟷螂(カマキリ)の頭の話。 三木の同書によると、カマキリは交尾の最中にメスがオスの頭をバリバリ食べ出すという。オスの頭が卵子の養分に早がわりしていく。同じオスとしては、なんともはや痛ましい。 江戸・元禄の俳人である宝井…

川田修著『かばんはハンカチの上に置きなさい』(ダイヤモンド社)〜外資系トップセールスマンの極意

発売1週間もしないうちに2000部増刷のお知らせがありました。この不景気に、なんかスゴイ。都内では店頭にない店も多く、全国的にも出足好調とか。 プルデンシャル生命保険のトップセールスマンの、明日から真似できる小さなルールが満載です。でも、よ…

田口ランディ『時の川』〜原爆落ちて山河あり

小説の登場人物が口にした言葉を、その足下にぽとりと落してみせる。 さすが、というほかない。原爆をテーマにしたランディさんの小説『被爆のマリア』にある『時の川』という短編の話。 その場面の登場人物は二人。被爆経験者で、修学旅行にやってくる学生…

野中広務・辛淑玉(シン・スゴ)共著『差別と日本人』(角川oneテーマ21)

部落出身の、自民党の強面(こわもて)幹事長かつ官房長官経験者と、在日の経営コンサルタントで強力な女性論客。その二人が、「差別と日本人」をテーマに対談する。ハウツーばやりの出版界には珍しい硬派新書企画。ある方からメールで面白かったと教えてい…

寺田寅彦著『柿の種』〜人としての鮮度

と、まあ、寺田寅彦ショックに遭遇したとき、ふいに思い出されたことがある。 先日、BSイレブンの、阿川佐和子さんがホストの対談番組に、エッセイストの、えのきどいちろうさんが出ていた。ぼくの愛読&畏敬の書『妙な塩梅』の著者。 そのえのきどさんが…

寺田寅彦著『柿の種』(岩波文庫)〜リンクした先の豊穣(ほうじょう)

ひとつの興味があらたな興味に結びつき、そこで予想もしなかった驚きと出合う。本好きにとってはまさに理想的な流れで、この上もない喜び。 先日書いた、吉岡徳仁さんの本で紹介されていた(id:rosa41:20090602)、物理学者・寺田寅彦さんのエッセイ『柿の種…

宇多田ヒカル3万字インタヴュー(雑誌『Cut』6月号)

梅雨入りをまえに髪を切りに行った。 ざっと切ってもらい、シャンプしてもらいに一度席を立ったとき、宇多田の顔が表紙の雑誌が目に入った。しまった、最初に見つけてたら絶対読んでたのに・・・・・・。そう思いながら髪を洗ってもらった帰りに、すかさず手…

吉岡徳仁『みえないかたち』〜古典へリンクさせる本

たとえば、中川一政のこんな一文が、引用されている。 ―勿論、画は技術である。しかし、教わった技術は役に立たない。(かなり中略)牛や馬や鶏は人に飼われている。それは自分で餌食を探さない。与えられて満足している。猛獣はどうではない。どうしても満…

川端康成『舞姫』(新潮文庫)(2)

皇居のお堀端をたゆたう一尾の白い鯉(こい)。 小説の冒頭、その鯉にまつわる場面がある。元人気バレリーナの波子が、恋心をいだく竹原と皇居周辺を散策している。しかも、皮肉屋の夫に見つかりはしないかと、神経質になっていた彼女は、皇居のお堀端で一尾…