日誌
まず、あざやかな払い腰での一本勝ちにしびれた。押してきた相手の力を利用しての豪快な投げ技は、まさに「柔よく剛を制す」の真髄みたいな瞬間だった。 試合後のインタヴューでの、以下の彼女の言葉にはもっとしびれた。 (決勝戦の相手)デコス選手は柔道…
昔、女性誌のドキュメントページを担当していたとき、赤塚さんの奥さんに取材を申し込んだことがあった。ちょうど、赤塚さんの過去の対談をまとめた『バカは死んでもバカなのだ』が刊行されたとき。それを読んで、赤塚夫人の視点から、この天才を描けないか…
「最近の人は、頭ばっかり疲れてて、そのくせ身体をまるで動かさない。そのアンバランスさが、ストレスを一層助長しているように思いますね」 マラソン後に行くマッサージの先生の言葉が、頭の隅にこびりついている。 近頃、原稿を書いていると脳が腫れてく…
企画の趣旨を手短に説明して、ぼくは練りに練った最初の質問を口にした。 「横山さん、お好きな政治家はいらっしゃいますか?あるいは、嫌いな政治家の方でも構いません」 その年の参議院選挙で、故・横山やすしさんは、「風の会」から出馬していた。 「にい…
小雨そぼ降る中、ぼくは傘もささずに大阪の御堂筋通りを歩いていた。 身体は妙に火照っていた。そのくせ、頭は空っぽというか、正直、何も考えられなかった。午後3、4時頃。しばらくして思い浮かんだのはひとつの反省で、考えれみれば、ぼくはいつも取材す…
それは、度の強い眼鏡をかけたような感じ。 後頭部の安眠をさそうというツボをもんでもらうと、たまに、視力が一瞬だけ良くなったような気がする。あの感覚。あれに似てるけど、もっと驚きが大きい。 スポーツ選手の恩師の方と、試合のビデオを一緒に観てい…
行ってきました、川崎市の等々力陸上競技場。昨日の雨が嘘のような晴天で、夕方からナイター模様になると、青い芝とレンガ色のタータン・トラックがきれいに映える。レースを追う全方位型の空中カメラが、トラックを斜めに走ってるし。男子ハンマー投げ、4…
少し変わった紫陽花に目が留まる。店員さんに名前をきくと、アキイロアジサイといい、オーストラリアからの輸入品らしい。うまいネーミングだなぁ。日本の紫陽花は6月の花なのに「秋色」だなんて。1本2000円ときいてドキッとしたが、予算5000円の…
神戸、大阪で2本の取材を終えて、実家で一泊。正午過ぎの新幹線で帰京するため、新大阪駅構内の書店で出くわしたのが、この本。あっ、神様が読めと仰ってるなと直感。原稿を書く前の20分ほど、京都までちょっと読んでいくことにする。 ジェームス・ブラウ…
「よう調べてんなぁ」 「今回、○○さんにお話を伺うために、私なりにかなり資料を読み込んで準備をした上で、ここに座らせていただいてますから」 ぼくがそう応じると、その方は黙ってニヤリと笑われた。そこから潮目が変わる。相手との呼吸が合い、見えない…
深夜、なぜか目が覚めた。芋焼酎を飲んで、ぐっすり眠るはずだったのに、わずか4時間で目が覚めるとは。30分ほど我慢してみた。ビデオ録画もすでに稼動しているはずだから、後で観ればいい。今日は9時すぎの新幹線で、神戸方面へ出張だ。・・・10日深…
一事が万事、近頃つくづくそう思う。だから、日々の生活で、些細なことに注意しないといけないと。しかし、気をつけられることと、無自覚なこともあるから、もちろん限度はある。ただ、わずかでもその意識が頭の片隅にあれば、ちょっとは違う。いや、そう思…
スペイン人の彼女が、今日こんな質問をしてきた。「女の子たちがよく使っている『えっと・・・』って、どういう意味なの?」ぼくが、「英語で言うと、『レット・ミー・シー』です」と伝えると、「やっぱり、エスト(esto)と同じだったわ!」と、予想的中とば…
曇天の下にもかかわらず、満開を迎えたツツジの赤紫色が鮮やか。 いや、むしろ曇天だからこそ、どこか妖艶さを感じさせるあの赤紫が映(はえ)るのかもしれない。乃木坂から青山墓地へと抜ける乃木坂トンネル上の脇道の前後に、そのツツジが今咲きほこってい…
心地いい風だった。 2階にある茶藝館の窓に面した木の机に日差しがさし込み、時おり爽やかな風がしのび込んで、手にした茶碗から立ち上る湯気をくゆらせた。その風と日差しに、窓枠の外側におかれたコデマリの白い花も揺れていた。 台湾のホウ・シャオシェ…
地上61階の優越感がある。 蟻みたいに行き交う車や人を見下ろしていると、時間のたつのを忘れる。大きな窓のある喫茶店で、目の前を行き交う人たちを見ながらリラックスする。あれの約10倍ぐらいか。バカと煙は高いところに昇りたがる、という説もある。…
ぜいたくな時間だった。 ある柔道家の方と、先の北京五輪代表選考を兼ねた、体重別柔道選手権のビデオをみた。達人の解説つきで見ると、一度見たビデオがまるで違って見えてくる。選手の精神状態が、その姿勢や組み方、あるいは技を繰り出す場所に端的に表れ…
拙著『レンタルお姉さん』で取り上げたNPO事業(ニ―トの子どもをもつ家庭を訪問、若者との交流を図り、新たな生活を始めさせるきっかけ作りを担う有給スタッフ派遣)に、ついに政府が予算をつけることになった。もちろん、政府の事業だから、名称は「レン…
大手町周辺での打ち合わせを終え、六本木へ出て所用を済ませ、麻布十番へ向かう。今朝、奥さんに「六本木に行くついでに、浪速家総本店の鯛焼き買ってくるわ」と話していたから。お店に近づくと、行列はない。平日の午後4時すぎ。そうだよなぁ、こんな中途…
昔、小林秀雄は「質問するとは自分を語ることだ」と語った。 だけど、そのことを自覚できている取材者は、実際とても少ない。自分は上着までしっかり着込んでるくせに、ねほりはほり質問攻めにして相手を裸にしようなんて了見が、そもそも、人としておかしい…
早起きして、昼過ぎから皇居ではしる。 暖かな日差しの下、点々と桜や菜の花が咲き始めている。東京マラソンを思い出させるジョギング日和。5キロおよそ28分ペースで15キロ。18キロで急に脚が動かなくなったので、無理をせずにゆっくりジョギングに切…
やっぱり春分の日はすごい。 うちのベランダですっかり枯れ模様だったライラックから、21日朝、黄緑色の葉が顔をのぞかせた。枯れ枝から一斉に、新緑のプチ噴水めいた光景。物言わぬ草花の記憶は、歳月の流れにも左右されることがない。もう10年目だ。 …
すっごく(ウエストが)細くなったね。 ぼくの両脚裏がわの、ちょうどふくらはぎの上に座った奥さんが、そうつぶやいた。背筋うんどうをするために、両脚にのっかってほしい、とおねがいしたときのことだ。普段から肩甲骨つかって歩いてるし、走るのもそうや…
道草って、もう死語?セカセカ、カリカリした世の中には不似合いだしな。 霞ヶ関でランチ打ち合わせを終え、新宿へ向かう途中、車窓の雪景色を見ていたら、ふいにその道草をしたくなった。四谷の行きつけのジャズ喫茶でまったり和もうとしたら、意外と混雑盛…
義足の人たちと一緒に少し走ってきた。 しかも、ひさしぶりのタータントラックで、うつ伏せや腹ばいダッシュ、あるいは腿あげ(腿を前ではなく上にあげてぴょこぴょこ前進する)などなど。陸上部だった高校時代以来の感触が、ゆったりとよみがえる。プチ腰痛…
深夜、ひさびさに、近所のお寺に初詣。たしか、5.6年前に夫婦そろっておみくじで、「凶」を引いた因縁の寺だ。奥さんは「吉」、そしてご主人は「大吉」ゲッツ!鐘もつかず、お参りもせず、お寺近くの駄菓子屋で、揚げ餅(まんじゅうを天ぷら状に揚げたも…
<大人の見本>と呼べるような知人を持っている人は少ない。 ましてや近頃は、社会不正を働いて頭を下げる<子供大人>ばかりだ。一方、舌打ちしている人たちに囲まれていると、知らないうちに自分も同じ真似をしている。黒澤明の『生きる』に出てくる、市役…
モダンで、ゆったり。新八代(しんやつしろ)から鹿児島中央駅まで、約40分の九州新幹線「つばめ」の乗り心地は快適だった(右写真)。 座席がモダンな木製で布張り。通路をはさんで両側2席ずつの、ゆったり車両も良し。車内アナウンスは、日本語、韓国語…
野球の国際試合は、やっぱりシビれる。とりわけ日韓戦はね。ついつい最後まで観ちゃった。韓国代表もなかなかしぶとく食い下がり、じつに締まったいい試合だった。初回から、川崎なんて1塁にヘッドスライディングしてんだもん。いまどき高校野球でも、初回…
長く生きていると、予想外のことに出くわす。 まさか、自分が東北大学工学部大学院の企業フォーラムから、講演依頼をうけるなんて想像もしなかった。『レンタルお姉さん』の著者として依頼をうけたのだが、その背景はこうだ。 最近、大学院や企業の研究所な…