視点

病と向き合う人の言葉が、ぼくを強く揺さぶる理由 

新聞記事の言葉にグッとくることは少ない。だが東京新聞の6日付け夕刊で、そんな幸運にめぐまれた。 2005年に早期の乳がんが見つかった、女優宮崎ますみさんの言葉だ。除去手術後、抗がん剤治療より副作用が比較的少ないといわれるホルモン治療を選択し…

東京新聞❤ラブ!〜ミクロからマクロを貫く鋭利な洞察力 

機会があれば、7月2日付け東京新聞朝刊26面の特集、「いじめと生きる」最終回を読んでもらいたい。 「臭い」「デブ」「チビ」子どもたちの遠慮のない本音に直面する中学校教師の言葉から、その記事は始まる。それに続くのは、理解の遅い子に合わせて授業…

「年金問題」取材後記〜表面だけを掬ってバチャバチャやるだけの報道 

「年金問題」について3人目の駒村さんの原稿が、「日経BP-net」にアップされた。今回は取材の度に新たな発見があり、年金問題はとても迷宮めいていた。が、取材してみて、新聞やテレビ報道ではまるで知らなかったことが次々と出てきた。個人的には面白か…

1日200通の「命綱」 

多いときは1日約200通もメールを出す、という女子高校生の話が新聞に載っていた。彼女には「頻繁にメールする子は友だち関係が幅広い」というイメージがあるという。その反面、同級生からのメールへの返信が遅れると、仲間外れになるんじゃないかと焦る…

ライブな身体〜わが家のマイブーム

1時間走の疲れをとるために、少し温めのお湯に30分つかる。それでもとれない筋肉のしこりや張りがある。だから寝る前に、奥さんに軽くマッサージをお願いする。手刀みたいにして軽く叩いてもらうと、右太腿が気持ちよかった。つまり、そちらの脚の疲労度…

たまには憲法前文でもどうぞ

一昨日、うちで5年越しのクレマチスが今年も花を咲かせた。その花びらの紫は年を追うごとに色あせていく。それでもなお咲きつづけるものを見ていて、今まさに踏みにじられようとしているものについて思う。 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者…

西村佳哲さん(リビング・ワールド代表)と初対面 

そよぐ風をカーテンを使って可視化しながら、それを音楽と同調させる。あるいは風のゆらぎや強弱を、色彩やその色の帯によって、目に見えるものとしてカタチを与える。好きだなぁ、こういう感性と視点。それに触れる人間の五感をひらいてくれる感じがとても…

日経ビジネス今週号「”抜け殻”正社員〜派遣・請負依存経営のツケ」特集〜堕ちた技術立国の正体 

情報としては、かなり遅いのかもしれない。でも、うちの奥さんも言ってたけど、この特集はたしかに面白いわ。キャノンの請負社員は、同社のモノづくりのかなり根幹作業を担っているらしい。法的には、製造業の請負労働は単純労働に限られているから、つまり…

獰猛なる(1)

そうだ、獰猛なものがいる。くしくもそう思わせられる出来事が二つあった。 先週末、日本橋・高島屋近くのフランス料理店 「メルヴェイユ」に出かけた。久しぶりに再会する友人のシェフが、ベルギーでの修行時代の友人がシェフの店だと誘ってくれたのだ。日…

佐々木俊尚『ライブドア遺伝子の行方』(CNET JAPAN)〜今だからこそ必要な検証の視点

「CNET JAPAN」で、佐々木さんの『ライブドア遺伝子の行方』という文章を見つけた。同社退社後、新会社を立ち上げた人たちのインタヴューから、ライブドア社のネットコンテンツの先進性と、六本木ヒルズ移転後の同社の変化を明らかにしている。いい視点だし…

ワークショップ(2)〜脳の、普段使わない部分を鍛える 

カラーバスというトレーニングもしました。「バス」とはお風呂のバスで、ここでは色を浴びるということ。自分でひとつの色を決めて、街中でその色だけを追っかけて見る。すると、その色が社会の中でどんな意味合いを委ねられているのかが、ほんの少し見えて…

ワークショップ体験(1)〜脳の、普段使わない部分を使う感覚 

マンダラートって知ってますか。9マスに区切られた四角形。その中央にひとつの単語を書き、その単語に関連するもの、あるいはその単語から連想するもの、その単語を言い換えたものなどを他のマスに、どんどん書き込んでいく。イメージやアイデアを粘土にた…

決断できない「いい子」たちが招いた結末(3)〜冨山和彦氏談

およそ60年前、繊維産業が日本の顔だった時代の「トヨタ」だったカネボウが、なぜ落日を迎えたのか。その命題について、冨山氏は、10年前に繊維事業からいさぎよく撤退していれば、今なお堅調な化粧品部門を軸に経営は磐石だったのにという、マスメディ…

決断できない「いい子」たちが招いた結末(2)〜冨山和彦氏談 

冨山氏が、再生機構解散後に企業再生会社を立ち上げるというニュースが流れた。おお、このブログもタイムリーだなぁ。ボストンコンサルティング、そして同僚たちで新たに経営コンサルティング会社を立ち上げ、自ら会社の諸制度を作った冨山氏には、財務と事…

決断できない「いい子」たちが招いた結末〜冨山和彦・産業再生機構代表取締役専務談

「東大・大蔵省と、ただ勉強ができるというだけで、たいした挫折経験もなく偉くなった人たちに、血を出すような非情な決断はできないわけです。イージーゴーイングの人たちは、そこが駄目ですね。それが「失われた10年」と呼ばれる、この国の金融行政無策…

音符と歌声の狭間にこそあるもの

ここ3週間ほど、宇多田ヒカルの『COLORS』という曲をキーボードで練習している。一番新しいCDの中でもお気に入りの曲で、奥さんの友人にもらった楽譜集で見つけたから。ただ、スローテンポから始まり、徐々にテンポアップしていくので難しい。 数日…

言い訳をこそ疑う、という作法 

ひきこもり仕事ゆえ、時にたまらなく身体を動かしたくなる。夕方、ひと仕事終えて、ウォーキングに出て、そのまま銭湯へ。湯に浸かりながらテレビを観ていると、太田光らが、「なぜ政治にお金がかかるのか」というテ―マの下で、政治家と議論していた。 面白…

NHK課外授業「ようこそ先輩」〜自分が好きな音を大切にする 

ミュージシャン矢野顕子ファンの一人として、彼女が弱視だったとは知らなかった。その分、彼女は音に敏感になり、ひいては音楽に携わる出発点になる。最近、個人的にアンバランスさや弱点こそ、自分らしさとして磨きをかけるということを考えているから、な…

「人が生きていることには意味がある」(4) (22日のつづき)南京でその父親と会ったことで、帰国後、ぼくは上京する。東京で生活するためだ。とにかく文章を書くことを仕事にしたいと思っていた。季節は冬で、夜行バスに乗って、買いたての黒の革ジャン…

「人が生きていることには意味がある」の残酷さ(3) ぼくが中国に行ったのは87年の夏。海路でめざした上海の陸地はまだ見えないのに、海が一面茶色になったのには度肝をぬかれた。海が姿さえ見せない揚子江色に染められていた。「デカイ場所に行きたい」…

「人が生きていることには意味がある」という考え方の残酷さ(2) 先週、橋口譲二さんのトークショーで見かけた女の子について書いた。彼女が「人が生きていることには意味がある」という橋口さんの言葉に、「それはある意味で、とても残酷な意見だと思うが…

NHKハイビジョン「立川談志71歳の反逆児」〜枯野にひらく孤高の紅梅 

5、6年前か、2回ほど立川談志の落語をじかに聴いたことがある。演目は忘れたが、1席は殿様と町人との掛け合いだった。事細かな内容も忘れた。ただ、印象として鮮烈に残っているのはその人間観だ。 町人相手にざっくばらんに話しながらも、ついつい沽券や…

「人が生きていることには意味がある」という考え方の残酷さ(1)

「先生は、お話の中で、『どんな人でも、人が生きていることには意味があると思う』とおっしゃいましたけれど、わたし、それってある意味では、とても残酷な話だと思うんですが」 3日前に書いた橋口譲二さんのトークショーでのことだ。トーク終了後に、ある…

橋口譲二トークショー(ABCセンター本店)〜矜持の強度のあまりの格差

恥ずかしくてたまらなくなった、目頭が熱くなるほどだ。 これほどの羞恥心がぷるぷると震えるのは、いったい、いつ以来だろうか。歌手の矢野顕子さんへの取材時に、ある質問に対してズバッと切り返されて、自分のバカさ加減に堪らなくなったとき以来か。 橋…

E=mc2というロマン

エネルギーは、質量×光の速度の2乗に等しいことを意味する「E=mc2」。アインシュタインの特殊相対性理論の方程式だ。質量とエネルギーをイコールで結んだ点で画期的発見とされ、ノーベル物理学賞をうけた。 アインシュタインの軌跡を扱った英国BCCの…

NHKハイビジョン「白洲正子の愛した日本」〜1000年前を慮(おもんばか)る眼光

日本じゅうが東京五輪に沸いていた1964年、白洲さんは一人、いにしえの近江京の残り香をかぐように、近江地方の民衆文化や祭りなどを取材して回られていたという。その孤高なる精神の在り様がかっこいい。 関が原を突っ切る真新しい新幹線を見下ろしなが…

祖父江慎の「イヤ〜ン・パワ―を楽しむ」極意〜NHK『課外授業 ようこそ先輩』

やっぱり面白いわ、『課外授業 ようこそ先輩』は毎週きっちり観ないとな。装丁家の祖父江さんは、生徒たちが嫌いなものとしてあげたヒトデ、ナメコ、クモ、カエルなどを教室に持ちこむ。「イヤ〜ンはステキ」と唱え、生徒たちにその嫌いなものを手にとらせて…

NHKハイビジョン「五木寛之 21世紀仏教への旅」(3)ブータン編〜脱亜入欧の果てに

「生まれたら死ぬのは当たり前だから、ぜんぜん恐くありません」とにっこり微笑む少女や、「家族が元気だから、それだけでじゅうぶん幸せです」と穏やかに話す40代の母親。物価は日本の50分の1という、農業国ブータンの人たちの顔つきとその言葉に、こ…

NHKハイビジョン「五木寛之・21世紀仏教への旅」(2)〜他者もまた自己である

「なぜ人を殺してはいけないのですか?と問われたら、どうお答えになりますか?」 五木氏がそう問うと、韓国で生まれたという華厳教のある寺の和尚さんはさらりと答えた。 「すべては同じ根っこでつながっています。だから相手を殺すことは、自分を殺すこと…

7日夜・NHKハイビジョン「五木寛之・21世紀・仏教への旅」〜2500年前の成熟した死

「わが齢は熟した わが余命はいくばくもない (後略) 」 80歳で自らの死を念頭に最後の旅に出た仏陀。その途上、残り3ヶ月の余命を悟った彼が、弟子たちに残した言葉の最初の一行「わが齢(よわい)は熟した」がいい。自らの死を「熟す」という表現する…